想像するだけで摩耗する時間 トニカクカワイイ第141話「千年の孤独」 このエントリーをはてなブックマークに追加 想像するだけで摩耗する時間 トニカクカワイイ第141話「千年の孤独」

トニカクカワイイ第141話「千年の孤独」

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前の先行最終回から休載挟んでの新シリーズ。
楽しみにしていました。

今回の話では竹取物語について触れられています。

竹取物語はすぐ読めるのでどういう話か読みたい人は
電子書籍などでサクッと購入出来るので、この機会に読んでみるのをオススメします。

竹取物語の最後は、かぐや姫が月に帰ることになります。
その際、翁と帝に残したものが「不老不死の薬」。
この「不老不死の薬」は、帝が岩笠(調石笠(つきのいはかさ))に山に捨てるように命じた。
その山が不死の山、富士山と呼ばれるようになった。

竹取物語が9-10世紀に書かれたけど、正確な時期は確かハッキリしない。
誰が書いたかもわかっていなかったはず。
確かなのは2021年の今から1000年以上昔に書かれたこと。

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「不老不死の薬」、それだけ聞けば、山に捨てるのは勿体ないと思うのはある。
映画やドラマ、アニメに漫画、いろいろな作品で「不老不死」というのは出てくるものだし。
憧れに近い魅力を持っていたりもする。
ただ輝夜がいうように、本当に「不老不死の薬」があるなら、
それを飲むのはきっと正解ではない。

不老不死。
老いることも、死ぬこともない。
出会う人、出会う人が、老いていき、死んでいく。
それに対して自分は変わらない。
ただただ、逝く人たちを見送り続ける。

孤独で居続けることになる。
だから、「不老不死」は祝福ではなく、呪いとも言える。

命には終わりがあるから救いがある。と、輝夜が言うのは確かにそうなんだと思う。

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先行最終回の時も少し触れていたけど、ナサと司の間には誤解がある。
それは「司の正体をナサは知っている」と司が思っていること。
これについて先行最終回を読んだあとに少し考えてみた。

ナサと出会った日、つまり事故に遭った日に司は自分の正体をナサに話している。
でも、ナサは事故による記憶の混濁で覚えてない。

これが誤解だと思う。

ナサは事故当時、司が血まみれになったのに、
バス停で再会したときにはそれがなかったことを思い出した
......読者的にはこの時点で「人外か」と思っていたけれども。
ナサがそのことを思い出したことは実は大きいと思う。


さて、今回の話で、ほぼほぼ司は、岩笠/調石笠(つきのいはかさ)なんじゃないかなと思う。
どのぐらいかという9割ぐらい。
ただ畑先生が、トニカクカワイイにおいて、
岩笠/調石笠も実はこういう人でね。と出してきたら困るけど!

ほぼ「由崎司の正体について考えてみる2」といっても差し支えない。 トニカクカワイイ第120話「命の花」
この記事の時点で「司の正体が「鞍作福利」で決定かはわからない。」と書いていたけど、
「鞍作福利」もたぶん司の数ある名前、歩んだ道の一つでしょう。
出発点である不老不死を手に入れたのは、
帝から不老不死の薬を捨てるように命じられた
岩笠/調石笠のときだろう。

さて、しばらくは司とナサの間にある誤解がどうやって解けるか。
また司自身の不老不死という状態の扱いがどうなるか。
可視化されている問題としての、時子さんの逝去ですかね。

この先の展開が楽しみです。


トニカクカワイイ(15): 少年サンデーコミックス (日本語) コミック 2021/3/17