彼が本当に大切にしていたもの。よふかしのうた 第168夜「少し迷った」 このエントリーをはてなブックマークに追加 彼が本当に大切にしていたもの。よふかしのうた 第168夜「少し迷った」

よふかしのうた 第168夜「少し迷った」

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星見キクが教えてくれた場所に何があるのか。
そこにあったのは冷蔵庫。

しかも血液を保存するためのもの。
つまり、誰かの血液が保存されている。

誰の血液か、それは当然、目代さんの父親の血液。

吸血鬼は血を飲むと相手の考えてることや感情がある程度わかる。
つまり、キクは目代さんの父親の血液の場所を教えることで、
彼女の父が何を考えていたのかを知ってもらいたかったんだろうな。

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じゃあ、目代さんの父親の血液を誰が飲んで、その感情をするのか。
パッと出るのはナズナなんだけど、目代さんはそれをしたくない。
コウが自分が飲むといいだした。

子供のコウに、自分の父親が持っていた感情、問題を知ることは重たすぎる。
それを分かった上で、目代さんはコウに頼んだ。

これがコウにとって、初めての吸血......吸血という違うけど、血を飲むという行為になった。

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コウが口にしたのはたった数滴。
それだけで、目代さんの父親の感情が押し寄せてくる。

不安、ストレス、責任、絶望、後悔。
いろいろな感情があったけど、最後に見えたのは、
娘である目代キョウコの笑顔だった。

彼女の父が、星見キクに恋をして、吸血鬼になったのは間違いない。
でも、彼は本当にやり直したいと思っていた。
それは家族を、娘を大切に想っていたから。

この想いだけでも知ることができたのは大きい。
そして、星見キクはそれを知っていたから、この場所を目代さんに教えたわけか。


よふかしのうた (15) (少年サンデーコミックス) コミック 2023/3/16